市場直次郎コレクションの由来

市場直次郎コレクションについて

附属図書館では、13年度文部科学省の大型コレクション予算と学長裁量経費の配分により、「市場直次郎コレクション」(第1期)を購入した。

同コレクションは、故市場直次郎氏が蒐集した、近世後半から明治時代にかけての小説(草紙)類などの和書と文人の書画で、佐賀・長崎を中心にして九州全域に及ぶ。氏は近世文学や民俗学を研究され、戦前に佐賀師範教授、戦後は佐賀県内の高校長や福岡の大学教授を務められた。その研究業績に裏付けられた博識と鑑識眼は正鵠であり、蒐集量は豊富で、かつ貴重品が多い。

第1期では、そのうちの扇面、色紙、和書の818点を購入したが、殊に近世の文人による扇面の書画は約500に及び、全国的にも例がない。このなかには、国学者の大橋訥庵、儒学者の菅茶山・古賀茶渓、俳人の与謝蕪村など著名人とともに、中国人など幅広い階層の多彩な人々が含まれる。また、色紙には佐賀に係わる古賀精里、あるいは田能村竹田、与謝野鉄幹・晶子夫妻の作品があり、和書のなかには洒落本、滑稽本、さらに大津絵節の諸本が纏まっているなど、希少資料が多数ある。

本館の大型コレクションとしては「小城鍋島文庫」に次ぐもので、近世の思想・文学・地域文化・文人文化などの研究の重要資料として活用が期待される。また、扇面はフォルムといい、内容といい極めて日本的であり、書画・絵画資料としても貴重である。

平成14・15年度末に学長裁量経費で第2・3期分を購入し、同コレクション全体の購入を完了した。
(文化教育学部 井上敏幸)